目は臆病 手は鬼

金沢城入口に置かれていた 雪だるまファミリー 
 


〈折々のことば〉 287     鷲田清一   

目は臆病 手は鬼
               三陸地方に伝わることば


気仙沼のある魚問屋でのこと。
大にぎわいの宴席のあと、下げた食器の山を見てため息をついていると、
一家の母がこう言ったという。

途方もない量の片付け仕事を前に怖(お)じけているときも、
とりあえず手を動かせば存外すんなり事はなる。
震災後、すさまじい瓦礫(がれき)の山を前にしてボランティアの人たちがこのことばを立証した。
             「斉吉(さいきち)魚問屋便り」(2013年2月)から。                                                            
                                 2016・1・21