『 間違い』


『草にすわる』を受けての、谷川俊太郎さんの『間違い』



   『間違い』     
                    谷川俊太郎
      
   
   わたしのまちがいだった
   わたしの まちがいだった
   こうして 草にすわれば それがわかる

   そう八木重吉は書いた(その息遣いが聞こえる)
   そんなにも深く自分の間違いが
   腑に落ちたことが私にあったか

   草に座れないから
   まわりはコンクリートしかないから
   私は自分の間違いを知ることができない
   たったひとつでも間違いに気づいたら
   すべてがいちどきに瓦解しかねない
   椅子に座ってぼんやりそう思う

   私の間違いじゃないあなたの間違いだ
   あなたの間違いじゃない彼等の間違いだ
   みんなが間違っていれば誰も気づかない

   草に座れぬまま私は死ぬのだ
   間違ったまま私は死ぬのだ
   間違いを探しあぐねて