ハグ
ムクゲ ご近所で
郁代の病状が進み寝たきりになった時、
私にできることは、足をさすることだけでした。
どんなに抱きしめたかったでしょう。
けれども身体のあちこちが痛んで、さわることができませんでした。
そのことが、ずっと気になっていました。
最近、ふと思い出されることが・・・。
発病する前の年のことでした。
お正月に帰国していた郁代がオーストラリアへ戻る時、
玄関前で、父に、母に、一人ずつ“ハグ”したのです。
はじめてのことでしたから、
くすぐったいような、気恥ずかしいような気分でした。
今思えば、お別れのあいさつのようにもとれます。
そんな場面が残されていたことが、
不思議でなりません。