青い空を見上げましょう



家の中でもやっと動いていた頃、
1か月ぶりに、オーストラリアから郁代の見舞いに訪れた婚約者のAさんに、
私はそっと手紙を渡しました。


・・・・・
10日ほど前より全く食べられなくなり、
時々の水分点滴だけで体力を維持しています。
今朝は腹水のため張りがひどく苦しそうです。
   「ここまでよく辛抱した」
   「よくがんばった」
とほめてあげてください。
もう、身体が限界なのでしょうね。
・・・・・
 
   
手紙のことを聞いたのでしょう。Aさんに、
   「これまでよくがんばったね。えらかったね」
と、ほめてもらったのでしょう。
Aさんは帰り際に言いました。
   「もう、がんばらなくてもいいからね・・・」


翌日郁代はこう言いました。


   「やさしい家族、すばらしい家族がいたということに気づいたよ。
    病気になった辛さより、
    そのことがうれしく有り難いことやわ」


身体は辛く極限の状態なのに、
「有り難い」という言葉が聞けたことがとても不思議でした。それまでは、
前を向いてがっばって、がんばってきたのです。
でも、もうがんばれない・・・
そう思っていたとき、


    これまでのがんばった自分を認めてもらえた・・・
    親孝行を何一つできない自分が許された・・・
    病気になった自分をもう責めなくてもいいんだ・・・


とのうれしさで胸がいっぱいになり、
ゆったりと大地に身を投げ出したのではないでしょうか。


このころから、
   「お父さん お母さんの子供に生まれてよかった」
   「生んでくれて ありがとう」
   「親孝行できなくて ごめんね」


最期には
   「これまで 完璧だった」・・・
世界を肯定しているように思いました。
あなたにあえてよかった」のメッセージを遺してくれたのです。




被災地のみなさん、本当によくがんばったね。
時には、深呼吸して思いきり腕を伸ばし
寝ころんで、青い空を見上げましょうよ。



★ 散歩先での子どものつぶやき
「先生いいこと教えてあげる」
保育士の手を引いて芝生の上に連れて行き
「寝ころんでみ。気持ちいいよ」
(5歳児)