ミュージカル「クレイジー・フォー・ユー」

「お母さんだけの添乗員になってくれない?」
と郁代にお願いしたら、あっさり「いいよ」と。
母と娘のヨーロッパ旅行に郁代が用意したのがロンドン発のツアーでした。


ツアー出発の前日、ロンドンに着いた夜に、
郁代が連れて行ってくれたのがミュージカル『CATS』。
『キャッツ』は、世界で興行的に最も成功したといわれ、
マンカストラップ、ラム・タム・タガーといった個性的な猫たちが都会のごみ捨て場を舞台に、踊りと歌を繰り広げます。
人間が一切出てこない型破りの演出と振付、
郁代には完璧にわかっていた英語のセリフ・・・、
私はストリーもよくわからないまま踊りと歌を楽しんでいたのです。
それが初めて触れた本物のミュージカルでした。
病気がわかる前、2000年8月のこと・・・。
郁代はたくさんの思い出を私に残してくれていました。



きのうは兼六園に近い“本多の森ホール”での、
劇団四季のミュージカル 「クレイジー・フォー・ユー」を観てきました。



主役ボビーは金沢出身の加藤敬二さん
ですから盛り上がりますよね。
最近は演出や振り付けも担当されています。
現在の劇団四季を代表する大スターの、
ダンスやステップを目の前にして大満足、感動しました。
もちろん迫力ある歌にも圧倒されっぱなし、心に響きました。


本多の森ホール”、いや本当はここはロンドン・・・、
私の心は郁代と一緒にミュージカル『CATS』を観ていたのです。
自然に涙が流れてきました。



ところで、ヨーロッパ旅行の参加者と郁代は楽しげに英語で話し、
私はというと・・・おいてけぼりでした。
でもね。
その頃郁代はオーストラリアにいたので、
離れて暮らす娘と旅行中は一緒にいられるのですから十分満足、
しあわせいっぱいだったのですよ。
会話に夢中で、
「通訳するからね」との約束は守れなかった郁代ですが、
景色なんかどうでもよかったのです。



加藤敬二略歴
1984年、劇団四季の『キャッツ』オーディションに合格、
同作のミストフェリーズ役でデビュー。
ミストフェリーズ役は加藤にとって、
ニューヨークのブロードウェイで『キャッツ』を観て以来、
憧れの役であった。
その後、『ウエストサイド物語』、
コーラスライン』など数々の作品に出演。
高いダンスレベルで、たちまちのうちに劇団四季のトップダンサーに昇りつめ、その地位を確立する。