希望を胸に

シドニー 世界遺産オペラハウス


ワーキングホリデーでシドニーへ向かった郁代。
とりあえずの滞在先はふじこさん宅で1週間だけというもの。
その間に手探りでこれからの住まいを見つけるのです。
ふじこさんからのお便りで、
このころの希望に満ちた郁代にいつでも出会えるのです。


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初めて出会った郁代ちゃん   
                     ふじこさん


郁代ちゃんが大きなスーツケースを持ってタクシーから降りてきた時、
「なんて色が白くって綺麗な女の子なんだろう」
と驚いたのを覚えています。
以前勤めていた会社の人の紹介で、
郁代ちゃんはシドニー空港から直接我が家にやって来ました。
シドニーで仕事をしたいということで、色々なところで情報集めをしたり、
ワーキングホリデーオフィスに求職の登録をしたりして積極的に動き回っていました。
とても都会的なのに、なんて堅実で地に足がついた考え方をする真面目な女の子なんだろうと思いました。


当時、我が家の子供たちは五歳と三歳。
保育園から帰ってくるといつも郁代ちゃんにまとわりついていました。
特に三歳の息子は郁代ちゃんのことが大好きで、
勝手にベッドにもぐりこんでは一緒に寝てもらっていました。


その息子も今ではハイスクールに通い、
私よりもずっと背が高くなってしまいました。
日々、成長する子供たち。
一緒にご飯を食べたり、笑いあったり、けんかしたり。
子育ては大変なこともありますが、楽しいこともたくさんあり、
郁代ちゃんをなくされたご家族のお気持ちを思うと本当に胸が痛みます。
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ワーキングホリデーの滞在期間は1年間だけで、
生活費として、アルバイトだけが認められています。
たまたまアルバイトで入ったアメリカ企業が、1年後を待って正式採用してくれたのでした。
500人ほどの外国人社員に混じって、日本人は5人だけ。
セクションは日本企業を顧客とする部門で、
外国人の上司は日本の大学を出た方でした。
郁代を娘のように可愛がって下さいました。