ヤクザさんとの出会い 

カワアイサのつがいでしょうか。会えてうれしいです。

浅野川にて

「東京の運転手さんの話」で、思い出しました。

かっこちゃんの原点に触れるエピソードとして以前にも書いたことがある
「ヤクザさんとの出会い」、以下再掲です。  

わたし、ほんとにすぐ迷子になるので、あんまり一人で電車に乗るとかないんですけど、あるとき東京の山の手線に一人で乗ったんです。
電車が来て、ドアが開いたら、何か様子が変だったのです。
黒い洋服を着て、黒いシャツを着て、黒い靴をはいた、髪の短い男の人が、学生さんの襟首をつかんで殴っていたのです。 

私はそのとき、
学校でみかちゃんという女の子と毎日いっしょにいたのです。
みかちゃんは、とってもつらいことがあると、ほんとに心がとてもとてもつらくてたまらなくなると、
よその人の髪をギュウっと引っ張ってしまったり、殴ってしまったりしてしまうのです。
ピアノなんかもドーンと倒してしまうのです。
ほんとにすごく細い女の子なんだけど、
そういうときはすごく怒っているから、すごい力が出ちゃうのです。
それでも、気持ちが収まらないと、自分の顔もバンバン殴って、顔を紫色にしちゃったりもします。

けれど、「みかちゃん大好き」と言ってぎゅっと抱きしめて、
「だいじょうぶだよ、怖くないよ」 って言うと、だんだん落ちついていく、
そんなみかちゃんとちょうどいたときだったのです。

そのみかちゃんと、
黒い服を着た男の方が、ちょうどわたしの中でかぶさったのかなぁって、
そのときはあんまりよくわからなかったけど、あとで思いました。

頭から足先まで黒い服のその男の人をぎゅっと抱きしめて、
「だいじょうぶ、怖くないよ。怖くないから、だいじょうぶです」
って言ったのです。

そうしたらビックリしたことに、
その黒い服の男の人の目から、涙がポロポロと流れたのです。
その方は「自分は極道だ」とおっしゃいました。
極道ってやくざさんのことかなあと思いました。
やくざさんは強そうだけど、でも、つらいことがいっぱいあるんだろうと思ったんです。

私が抱きしめたことをやくざさんは、
「どうしてそんなことをするの?」 とおっしゃったので、
「とってもつらそうだったから」 って言ったら、
またオーって声をあげて泣かれたんです。

そして、一緒に横に並んで座席に座りました。
「今からどこ行くの?」 とおっしゃったので、
「講演会に行きます」 って言ったら、「誰の?」 って言われました。
「わたしのです」 と言ったら、
「おじさんに嘘をついてはダメだよ」 っておっしゃったんです。
「嘘だろ」 って言うんです。

たぶんこんなわたしが、どなたかの前でお話しても聞いてくださる方がいるだろうかと思われたのだと思います。
でも嘘ついてると思われるのも悲しいから、どうしたらいいかなぁと思って、
ちょうどわたし、そのときに、『たんぽぽの仲間たち』(三五館) という黄色い本を持っていて、
それにわたしの顔が後ろのページに載っていたと思って、
その本を見せて「これわたし、これわたし」と言いました。

そしたら、そのヤクザさんが 「ああ、ほんとだ!」 と思ってくださって、
「僕も今から講演会について行ってお話を聞きたいけど、僕が行くと迷惑をかけるから行けないなあ」 と言って、お友だちになって、
それから文通友達になりました。
 
お友達と別れるときに、
「僕は今、どうしてもあなたに言っておきたいことがある」
と言われました。
「何ですか?」 と言ったら、
「またこんな場面になったときに、今日みたいなことをしちゃダメだよ」
「僕みたいに優しい極道ばっかりとは限らないからね」
って、そう言われたんです。
その方は、普段は絶対に一人で電車なんか乗らないんだそうです。
でも、なぜかその日は乗ったということでした。

そのあと『たんぽぽの仲間たち』 の本をすごくいっぱい買ってくださったんです。
その方は組の偉い人で、組長さんか何かで、
朝の会で 『たんぽぽの仲間たち』 の本を使ってくださって、
「毎日たんぽぽの話をしてるよ」 とお手紙をくださいました。

ある日、
「かっこちゃんは、人を殴るのは嫌いですか?」と書いてありました。
わたしは「好きじゃない。やっぱりとっても怖いですから、人を殴るのは好きじゃない」 って、
「言いたいことがあれば伝えればいい。でも殴るのは好きじゃない」
とお返事に書きました。
そうしたら、お友達は「だったら僕も、絶対に殴らないよ」 って約束してくれたのです。

けれどある日、
「僕はかっこちゃんとの約束を破ってしまったよ」って葉書きをもらいました。
どういうことかというと、ちょっと細い道を大きな車で移動していたら、
車椅子のおばあさんが溝にはまっていたのだそうです。
車が通れなくなっていたので若い人に、
「あのおばあちゃんを助けてあげなさい」と言ったら、若い人が降りて行って、
「そこをどけ」って言って、そのおばあちゃんを殴ってしまったのです。
そこで、そのわたしのお友だちのヤクザさんが、その若い人に、
「おまえのために毎日たんぽぽを読んでやってるんだ!」って言って、
「助けてあげてお送りしなさい」って、そう僕は言いたかったけど、
そのときに若い人を殴ってしまった、っておっしゃっていました。

「僕は虫にも気持ちがあることを知りました」って、
その同じ手紙に書いてくださっていました。
今まで虫とかそういうものが、たとえば誰かを好きになったり、
そんなことをするなんて思わなかった。
それから気持ちがあるなんて思ったこともなかったのに、
たとえばカエルがじ〜っと窓に止まって虫を食べようとして、そのチャンスをうかがっている。
そういうものも、こう目に止めて、じっと見るようになったとか、
そんなことも書いてくださいました。

その方と文通しはじめた頃は平仮名が多いお手紙だったんですけど、
ある日突然ワープロのお手紙を送られてきたら、急に漢字ばっかりになってて、すごくビックリしたんです。
その方のお手紙にはこんなふうに書かれてありました。

・・・・・
前略、ごめんください。お元気でいらっしゃいますか?
かっこさんは、ビックリしてると思います。
パソコンをあれからしばらくは箱のふたを開けたり閉めたりしていただけでしたが、いつまで経ってもこれではラチガアカナイと思い、奮起して、先ず文字を打つことからしています。
これでも四苦八苦ですが、
かっこさんのビックリした顔を頭で考えながら、手紙から始めています。
いつになったらインターネットができるのかわかりません。
(加津子注……わたしが 『たんぽぽの仲間たち』 というHPを持っているので、それを毎日のぞこうと思ってパソコンを買ったそうです。)

若い者にもパソコンができる者がいるので、聞くことができれば良いのですが、僕はつまらない人間で、情けなくなるのですが、
自分から「教えて欲しい」という言葉はなかなか使えません。
かっこさんはどう思うか、でも他の人は極道がパソコンをするとは思わないと思うのですが、若い者の中には機械が好きな者もいます。

だから「教えて欲しい」と頼めばどんなに喜んでくれるかわかっているのだが、自分はいつも
「人様には教えてもらうことばかりだ」
と若い者に言っていながら、けちな心や人に教えてもらうことが恥ずかしいという心が邪魔をして、それができないのです。
偉そうにしながら、人間が小さいという証拠です。

人間が小さいと言えば、送らせていただいた人形は、
恥ずかしながら僕が行って買ったものです。
(加津子注……バレンタインデーにキティちゃんの大きな人形を送ってくださったんです。)
僕は若い者に頼むこともできたのでしょうが、それも恥ずかしく、
自分で行って、店の前で入ろうと思って止めて、
入ろうと思ってまた止めて、
それでも、かっこさんが喜ぶ顔が見たくて店に入ったのです。

思えばキティちゃんが何かということすら知らなかった僕が、
店でキティちゃんのものを買おうとしてるのだから、変わったものです。

店の人も、僕が入って行ったものだからビックリしていたようでした。
自分に合わないというか、かっこちゃんたちのような女性がたくさんいたので、それでもう出てしまいたかったです。
「何でも良いから包んでくれないですか?」と店の者に言ったら、
「たとえば、どんなものですか?」と言うので、
「取りあえず、それを」と、人形を買いました。
もっと違った物が良かったかな?

しかし僕は、前から思っていることがあります。
(加津子注……ここから書いてくださっている文は、とってもわたしにとっては気恥ずかしいのですが、書いてあるので…。)

かっこさんに会うと、誰でも会う前と変わってしまう。
まだまだ若い者に習うということができないでいるが、
そのことが恥ずかしいとは思わないでいたし、
パソコンはやるし、おもちゃ屋は入るし、
そんなことは今まで考えもしなかったし、
誰が見ても信じられないことでしょう。
しかし、まわりのみんなも「変わった変わった」と言います。

『たんぽぽの仲間たち』 を話してやると、若い者も変わって行きます。
おそらくかっこさんは、今もまわりを変えているのでしょう。
でもかっこさんは、「そんなことはないのだ」 といつも言いますね。

クリスマスには何も贈れなかったが、その人形で我慢してやってください。
風邪をひかないでください。
手紙というものは、自分で書いてもつらいが、
パソコンで書いてもまだこんなに大変なものです。
・・・・・

初めてパソコンで文字を打つのはどれだけ大変だっただろうと思います。
誰にも教わらないで、こんなに長い文章をくださったのだと思うと、
涙が自然とこぼれました。
お友達は「変わった」と言ってくださったけど、私こそ、お友達と出会えてすごく変わったな〜、と自分で思います。

最初は、極道さんとかヤクザさんて、怖い人だとばかり思っていました。
道でピストルで人をズドーンっと撃って殺しちゃうのかな〜とか、そんなことをお友達と知り合う前は思っていたと思います。

でもその方は、とっても優しい方で、ボランティア活動にもみんなで出かけているんです。
ゴミ拾いとかもしてるとおっしゃっていました。
災害が起きれば真っ先に災害地へ出かけるのです。
東北の方へもずっと出かけられているそうです。

お友達は、
「かっこさんはどう思うか知らないけど、僕たちの世界には、
他の世界で今ある社会で、たとえば生まれとか、国とか、育ちとか、いろんなことで分けられて、つらい思いして入って来ている若いやつがいっぱいいるんだよ。
この世界では誰も平等で、誰も差別しないから、ここに帰って来るんだよ。
そういう苦しい気持ちもわかってやって欲しい。
人は、やくざを極道の者を責めるけど、
そういうところに追い込んでいるのは、社会の人たちなんだよ」
と教えてくれました。

そんなことも、わたしは全然その方に会うまで気がつけなかったのです。
人はみんないろいろに生まれます。生まれも育ちもいろいろ。
でも、人と人が交わると、人はいろんな大切なことに気がつけて変わって行けるなあと思うのです。
それが、人がいろいろに生まれるという理由なのかな? 
それが人が出会っていくことの意味かなと考えています。

お友達とは、今もメールでお互いにしょっちゅう連絡をとりあう大切な間柄です。
お友達は今、組のみなさんとずっと東北に出かけて、がれきの処理のお手伝いや、みなさんのおうちでお手伝いがないですか?と尋ねてお手伝いをされています。
それから、宮ぷーのこともずっと応援してくれていて、
宮ぷーの動画を見ては、声をあげて泣くそうです。
本当に優しいお友達。いただくメールにいつも涙がこぼれます。
お友達が大好きです。   かつこ

かっこちゃんの宮ぷーこころの架橋ぷろじぇくとより配信されたものです。