大きな御手の中


お兄様である小川一乗師 のお話でもよくお聞きしましたが、
北海道の鈴木章子(あやこ)さんの 『癌告知のあとで』は、
今でも広く読み継がれています。
そこには、こんな言葉があります。

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よく新聞などで有名人がガンで亡くなると、「ガンに負けた」といいますが、
死が負けであるなら、生きとし生けるものすべて敗者であろうかと思います。

私は肺一葉切りとることにより、元気な頃よりも自分の体を自覚し、
「手もあった! 足もあった! あれもこれもあった! あった!」と、
思いもかけずありあまるほどの沢山のものをいただくことができました。

また、ガンという病気のおかげで、死をみつめなおし、
過去四十六年間の生命をもう一度生きることができました。
また、身にあまるほどのおかげさまに出あうことができ、
還るべき私の故郷も父母の死を通しまして、はっきりと見えてきました。
父母の上に「倶会一処」の世界を見せていただきました。
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    無形の存在

    肺一葉 捨てて
    はじめて
    空気の存在を
    実感しました
    無形の存在を
    たしかに
    受容できました

 
         大きな御手

         私がする……
         私がしなければ……
         私がしてあげる……
         と思って生きてきたのが
         してもらうことが多くなったら
         主人も子ども達も
          それぞれが
         生かされていたのが見えてきた

         私がいなくなったら……と
         胸がはりさけそうだったのに
         残される主人も子ども達も
         大きな御手の中……

         一番大きな心残りが
         魔法のように
          とけてゆきます