〈折々の言葉〉 69 


〈折々の言葉〉 69   鷲田清一  

父上様 母上様 三日とろゝ美味(おい)しうございました。
干し柿、もちも美味しうございました。
                         円谷幸吉

 「もうすっかり疲れ切ってしまって走れません」に至るまでに、
兄姉、おいめいなど31人の近親に向けた、食べ物、洗濯、送り迎えなどへの礼が挟まる。
「日本」の期待を背負い、ついに応えきれなかったマラソン選手の遺書は、
大義ではなく身近な人たちの小さな支えに宛てられていた。
東京五輪で銅メダルを取るも27歳で自死

                            2015.6.9

郁代の手紙が思い出されました。

「おとうさん、おかあさんの子どもとして生まれて来られて、
わたしはとってもしあわせだったよ。
本当に有り難う」