命の輝き


新聞の歌壇で


隣り家の赤児の泣く声きこゆれば
寒夜のひとりもほのぼの温かし     (徳島市)磯野富香


が目に留まりました。
郁代の詠んだ歌のように聞こえたのでした。


病状が進んで動けなくなり、2階自室から1階の病室に移動したのですが、
すぐ隣が保育園でした。
幼児の泣き声、笑い声、歌声あり、ケンカありと
一日中とても騒々しいものでした。
静かに過したいだろうなあと心が痛んでいたところ、
見舞いに来た友人に郁代は言ったのです。


「やかましいなあと思うでしょう。
でもね、痛さや苦しさがまぎれるからこの部屋でよかったよ」


郁代は“寒夜のひとり”を過していたのだなあ。


幼児の声は騒音ではなく,
『命の輝き』そのものに思えたのだなあと、
涙があふれてくるのでした。