『海の果て』

 映画『ふしぎな岬の物語』の劇中詩として、
金子みすゞさんの詩が吉永小百合さんによって朗読されます。

『海の果て』
                  金子みすゞ

雲の湧くのはあすこいら、
虹の根もともあすこいら。

いつかお舟でゆきたいな、
海の果までゆきたいな。

あまり遠くて、日が暮れて、
なにも見えなくなったって、

あかいなつめをもぐように、
きれいな星が手で採れる、
海の果までゆきたいな。


『鯨法会』
                 金子みすゞ

鯨法会は春のくれ、
海に飛魚とれるころ。

浜のお寺で鳴る鐘が、
ゆれて水面をわたるとき、

村の漁師が羽織り着て、
浜のお寺へいそぐとき、

沖で鯨の子がひとり、
その鳴る鐘をききながら、

死んだ父さま、母さまを、
こいし、こいしと泣いてます。

海のおもてを、鐘の音は、
海のどこまで、ひびくやら。